
実績あるRAから、手探りの新チーム開設へ
ヒューマンソリューション事業部は、深刻な人手不足に悩む外食産業と、働く意欲のある外国籍就労者を繋ぐ架け橋です。一昨年、組織の分業化と専門性の向上を目指し、既存顧客のフォローに特化した「CS(カスタマーサクセス)チーム」が新設されました。
※CS(カスタマーサクセス)とは: 契約して終わりではなく、導入後のお客様が目標を達成し、成功できるよう並走して支援する役割のこと。
その立ち上げという重責に、1人目のメンバーとして任命されたのがSさんでした。それまで彼女はリクルーティングアドバイザー(RA:企業向けの採用コンサルタント)として、新規顧客の開拓から就労後のフォローまでを一人で完結させていました。しかし、会社が目指したのはその先です。既存顧客との関係性をより深く、強固なものにする専門組織の構築。そこには、RAとして誰よりも現場の泥臭い課題に真摯に向き合ってきたSさんの「実直さ」と「突破力」への、会社からの強い期待が込められていました。
「正直、何をすれば正解なのか全くわからない状態でした。営業時代とは全く違う役割に、戸惑いと孤独を感じながらのスタートでした」
理想と現実の乖離「ありがとう」が遠ざかる――“クレーム処理班”と自嘲した日々

CSとしての大きな任務の1つは、外国籍スタッフが働き始めた後に行う「定期面談」です。これは3ヶ月に一度、国に認められた支援機関である「当社」が、スタッフ本人と、受け入れ先の企業それぞれに対して実施する対話の場です。特に「特定技能(※)」という在留資格で働く方の場合は、国によって定められた義務でもあります。
※特定技能とは: 日本の深刻な人手不足を解消するために作られた、外国人が日本で働くための在留資格(ビザ)の一種。留学生などの「アルバイト」とは違い、飲食でフルタイムで働くことができる。
しかし、立ち上げ当初のSさんを待ち受けていたのは、想像以上に過酷な「マイナスの調整」の連続でした。
「営業の時は契約が決まり、『ありがとうございます!』と感謝される瞬間がゴールでした。でもCSでは、会うたびに『実は困っていて……』という相談や不満から会話が始まります。行く先々で問題が噴出しているような感覚に陥り、そのギャップに、最初は自分の仕事が後ろ向きなものに思えてしまったんです。企業担当者からも『Sさんから連絡が来ると、また何か悪い報告かと思って身構えちゃうよ』と冗談めかして言われるのが、当時は本当に突き刺さって……。自分たちは単なる『クレーム処理班』なんじゃないかと、何度もへこたれそうになり、自問自答を繰り返す日々でした」
国境を越えた共闘。孤独な戦いを支えた「盾であり、矛」
そんな心が折れかけていたSさんを支えたのが、同じく立ち上げメンバーとして加わったベトナム人スタッフのAさんでした。Sさんが企業側の窓口として苦悩する一方で、Aさんは就労者の側に徹底して寄り添いました。

「言葉の壁もあって私だけでは掴みきれない就労者の本音を、Aさんが母国語でじっくりと汲み取ってくれました。また、ビザの手続きや生活習慣など、専門的な知識で現場を具体的に助けてくれる姿には何度も救われました。企業側には私が課題を整理して伝え、就労者側にはAさんが解決策を提示する。二人が役割を分担して粘り強く対話を重ねることで、ようやく一つの問題が解決に向かう。Aさんは、私にとってもチームにとっても、欠かせない心強い存在でした」
1年の苦闘を経て、現場の悲鳴が『サービス』に変わる
「とりあえず面談をして、起きた問題を解決する」という状態から、チームとして納得のいく形ができるまでには、丸1年という長い時間がかかりました。 Sさんは、現場で吸い上げた「悲鳴」を上司に相談し続ける中で、一つの確信を得ます。「この困りごとを解決する仕組みを作れば、それこそが新しいサービスになる」という視点です。
当初は、一つの課題を解決するだけの「点」の対応だと思っていました。しかし、「この悩みは他の会社も共通して困っているのではないか?」「自社の直営店ではどう解決しているのか?」と実例を参考に思考を巡らせることで、解決策は「点」から「線」へ、そして「面」へと広がっていきました。
実は、現在展開しているサービスの中には、まさにSさんたちが1年かけて現場から拾い集めた課題から誕生、あるいは拡張されたものがたくさんあります。
例えば、生活を根底から支えるインフラの整備です。就労者から漏れる「スマホの手配ができず生活が立ち行かない」という切実な声から生まれた『GF Mobile』による通信SIM支援や、「住む場所がない」という不安を解消するために仕組み化した『GF Estate』による社宅紹介など、日本での生活基盤を整えるサービスを構築していきました。

さらに、外国人材が直面する最大の壁である「言語と接客文化」の課題を解決するために誕生したのが、ラーニングサイトである『GF Academy』です。離職理由の多くが、言葉の壁による孤立や現場特有の振る舞いへの理解不足にあることに着目し、それらが学べる環境を整えました。
現場に直結した学びやインフラを提供することで、就労者は自信を持って働けるようになり、企業の教育負担も大幅に軽減されました。不本意な早期退職を防ぎ、「定着率の向上」という私たちが最も解決したかった仕組みを、自分たちの手で「立体的なプロジェクト」として成功させたのです。
「拾い上げた課題を事業としてカタチにする。自分の一言がきっかけで会社のサービスが強化されるのは、RA時代には味わえなかった組織を動かす醍醐味でした。CSは現場の声を吸い上げ、新しい価値を生み出すエンジンになれる。そう気づいた時、仕事がもっと楽しくなりました」
「入社」はゴールではなく、深い伴走の始まり
当初、Sさんが感じていた「マイナスの調整」への抵抗感は、時間の経過とともに確かな手応えへと姿を変えていきました。
「営業時代は『入社』が決まれば一つのゴールでした。でもCSは、そこからが本当の始まりです。三ヶ月に一度、逃げ場のない対話に実直に向き合い続ける。その積み重ねが、ある日思いがけない言葉となって返ってきたんです」
以前は「Sさんから連絡が来ると、また悪い報告かと思って身構えちゃうよ」と言っていた取引先の担当者様から、こんな電話がかかってくるようになりました。
「Sさんはいつも業界の新しい情報をすぐに教えてくれるし、御社ではどう対応しているのか、など業界のいろいろな話を聞くのも楽しみにしてるんだよ(笑)」
「その言葉に、本当に救われました。私が届ける現場のリアルな情報が、お客様にとって価値のあるものに変わったんだと実感できた瞬間でした。最初は厳しい表情だった企業担当者様も、泥臭く一緒に問題を乗り越えるたびに『Sさんなら、これも相談できると思って』と、採用以外の経営課題も打ち明けてくださるようになりました」
また、この「現場のリアルな声」から生まれる解決策は、今や事業部の枠を越え始めています。Sさんは現在、店舗メンテナンスや店舗不動産(SD)、さらには直営の飲食事業といった社内の他部署とも密に連携し、飲食店が必要とするあらゆるリソースを繋ぐ役割を担い始めています。
「私たちが現場で吸い上げる悩みは、会社の全部署の可能性に繋がっています。部署間の垣根を越え、飲食店様のあらゆるフェーズを支えられるチームになる。一人の担当者という点を超えて、組織全体で飲食店の成功に伴走するハブとして機能することに、今はこれまでにない醍醐味を感じています」
未来への展望:現場の課題を会社の次へと繋ぐ『ハブ』として

立ち上げから1年半以上が経過し、Sさんは現在、主任として現場を回る傍ら、後輩の育成にも携わっています。かつて自分一人が手探りで悩み抜いた経験を、今はチーム全体で共有し、仕組みへと昇華させている最中です。
「今でも現場では大変なことの連続ですが、課題があればあるほど、それを乗り越えた時の成長を実感できるようになりました。涙の数だけ強くなれる、と言ったら大げさかもしれませんが、自分がへこたれた経験があるからこそ、後輩には『その悩みには意味がある』と胸を張って伝えられます。今、目の前の飲食店様や就労者の方が困っていることは、いつか誰かを救う新しいサービスへと繋がる種になります。CSの仕事は、単なる問題解決に留まらず、現場の声を会社の各部署へと繋ぎ、より良い循環を生み出す『ハブ』のような役割なのだと実感しています」
Sさんの目標は、飲食に関わる悩みが生じた際に「まずはG-FACTORYに聞いてみよう」と真っ先に思い出してもらえる、企業の成長を支え続けるパートナーになることです。現場で起きる一つひとつの事象に実直に向き合い、一軒でも多くの飲食店の「成功」を自らの手で作り上げていく。飲食店が本来の業務や夢に集中できる環境を支えることで、業界全体の持続可能な未来を切り拓いていきます。